彼は言った。 かみさまなんて居やしないのだ、と。

薄く笑ったような三日月が彼をうっすら照らしていた。



















酷い雨、その呟きさえも雨の音に消される。

いつもなら日がちょうど落ちる時間で少しまだ明るいのに、今日はもう真っ黒な雲に覆われて深夜のように暗い。

ぼんやりと窓の外を見ていると携帯が騒がしく鳴いた。

画面に映されたのは久しぶりに目にする名前。

メールを読んで、簡単に身支度を整えて真っ暗で冷たい外へ出る。



言われた公園へ来ると、懐かしい人が傘を差して立っていた。

こちらに気づいて、手を上げた。



「月君!」

「久しぶり、

「吃驚した、急に何かと思った」

「ごめんね、こんな天気のときに」



いいよ、と返して隣に並ぶ。

高校卒業以来に見る。相変わらず、綺麗な顔だなあと思う。

暫く思い出話に花を咲かせていると、少しずつだが雨が弱まっているようだった。

一通り話した後、思い出したように月君は私を見た。



「そう、それでね。 は今何をやってるんだっけ」

「月君と同じ大学生だよ。 まあ、知能は劣りますが」



そう言うと月君はちょっと困った顔をして笑った。

ふいに胸の奥が締め付けられる気がした。

そう、この笑顔が好きだったんだ。 なんて思いながら。



「そこで、聖歌隊みたいなのに入ってる?」

「聖歌隊っているか・・・サークルだけど、入ってるよ。 どうして?」

「駅前とかで歌ってたりした?」

「え、 ・・・あ、もしかして見たの?」

「やっぱりも居たんだ」

「やだなあ、見られてたんだ」

「直接は見てないんだけどね。 聞き覚えのある声がするなあと思って」



そう言って月君は微笑んだ。

さっきよりも若干きつく胸が締め付けられて、なんとなく目をそらしてしまった。



「聖歌っぽいの歌ってたから、聖歌隊かと思った」

「その時はたまたま。何でも歌うよ。 だからって聖歌、嫌いな訳じゃないけど」

、かみさまとか信じてたっけ」

「最近信仰心は薄れておりますがね。でもいる、とは思ってるよ」



そう、と月君は目を地面に落として呟いた。

傘を打つ雨音が随分優しくなった。



「そういえば月君は? 私には何度かその質問するけど月君の意見聞いたこと無いよね」

「僕? 僕は・・・・・・ 」

「どう思ってるの? かみさま」



月君は少し黙って、ちょっと笑った。

私が笑った意味がわからなくて少し首をかしげると月君は微笑んだ。

そうして傘を閉じて、僕は信じてないよ、と言った。

殆ど霧のような小雨が傘を閉じた月君の周りを覆う。

あたりは真っ暗で小雨も見えないのに、少し遠い外灯と雲から少し覗いた月が月君の小雨で覆われた輪郭を浮き立たせていた。



「信じてないんだ?」

「そうだよ。 僕は信じてない」

「そうなんだ・・・ 私は居てもいいんだと思うんだけどな、かみさま」



ふいに、冷えた唇がぬるい温度を感じた。

目の前には小雨で少し塗れた月君が私を見ていた。

ばさ、と私の持っていた傘が開いたまま地面に落ちた。

動くこともできないまま固まっていると、もう一度ぬるい、あつい、温度を感じた。さっきよりも長く。

顔が少し離れて、月君の後ろの空が見えた。

暗い雲から三日月が見えて後ろから月君を薄く照らしていた。

薄い逆光の中の月君は笑った。後ろの三日月と月君の口は同じ形をしていた。



「かみさまなんて居やしない」



そう、笑った。

そのまま抱きしめられて、やっと脳が動き出した。

なに、どうしたの、と言う前に低く囁くように耳元で甘い声がした。



「かみさまは、神になるのは、僕なんだ」



キスのこともこの状況のことも聞きたいのに口から出た言葉はえ、なにが?だった。

月君はきょとんとした私をひとり満足そうに微笑みながらもう一度キスをする。



「僕はキラなんだ。世界の救世主なんだ」

「き、 ・・・・・キラ、?」

「そんな顔しないで、。君を殺そうと思ってるわけじゃない。でも只、」



君を偽りのかみさまから奪い取りたかったんだ、と耳元で月君は囁いた。



「僕が世界を創る。僕は、本物の、生きている、神になるんだ」

「月君が、神、さま・・・?」



そう、と月君は涼しく微笑んだ。

胸が苦しくなるのと一緒に冷たい空気に背筋がひやりと、した。

そうして月君はそのまままた耳元で話す。あまいあまい、甘い言葉。



「神さま、が そんな甘い言葉言っていいの・・・?」

「本当にそう思ってる人にだけはね。」



そう言って月君は微笑んだ。

抱きしめてくる月君の肩越しに、三日月が見えた。



かみさまは、いないのだ。

何故ならこんな恐ろしい人を創るはずがない。

恐ろしくいとしい、人、を 。





月が、私を見て笑った気がした。























みかづきさま

(かみさまかみさま、さまを愛してしまった私は悪い子なのでしょうか)



























Fin



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久しぶり月夢。

なんかダークな雰囲気にしたかったのですが

詰め込みすぎた感が・・・。



まだまだ文才が足りません・・・