「絞殺って、力が要るのよね」



隣で眠っていたと思っていたが、ふいに言った。

まだ起きていたんですか、という私の問いには答えず、もう一度言った。



「絞殺って、力が要るのよね?」



そう言って、彼女はベッドを軋ませて起き上がった。

ゆっくりと移動して、ベッドの上で書類を広げていた私の前に座る。

彼女の澄んだ眼が、じっと私を見ていた。



「・・・そうですね、要ります」

「結構、要る?」

「素手でするなら女性は相当な力が要るんではないでしょうか。何か、物を使って絞めるのとは別に」



急に何を聞くのだろう、と彼女を見つめながら思った。犯罪関連の本でも読んだのだろうか。

そんなことを思っていると、ふっと押し倒された。すこし冷えたシーツの温度が服の上から背中に伝わってくる。

私の上に跨った彼女の顔は逆光のせいですこし暗く見えていた。

ああ、私がいつも押し倒すときもこんな風に彼女には見えているのだろか。

なんて考えていたら、ひんやりとした細い指が首を這った。

彼女の眼は、じっと私の首を見ていた。



「私に貴方は殺せるの?」



そう言って彼女は両手で首を包む。私が何も言わないで要ると、少しだけ力が込められた。



「ねえ、どれくらいの力が要るの?」

「そうですね・・・ 私も絞殺はしたことがありませんからはっきりとしたことは」

「私なら出来る気がするの」



ちょっと微笑んで、また少しだけ首に回された指に力が込められた。

首に伝わる細い指の感触。そっと彼女の両手首を握る。



「貴方は・・・Lは、いつ死んでもおかしくないのよね?」



私が彼女を見ると、二つの眼がじっと私を見ていた。

言っていたでしょう、と彼女は呟いた。ああそういえば、少し前にそんな話をしたかもしれない。

仕事柄、常に命を狙われているのでいつ死んでもおかしくないと彼女に言った覚えがある。やめてよ、と彼女は少し寂しそうに笑っていた。



「なら、今ここで。私が殺しても貴方は平気?」



少し強く、首を包む手に力が込められる。

彼女はまっすぐに、私を見ていた。何故か、頬が緩んだ。



「殺してみますか」



そう言うと、彼女は少し驚いたように私を見た。

それからゆっくり、少しずつ、指に力が込められる。



「死ぬの?」



逆光のせいで、はっきりと表情がわからない。微かに、声が震えているのは分かった。



「殺してくれますか」



口の中が急に塩辛くなった。

ぽた、ぽたと落ちてくる滴が口の中に入ってきたらしかった。

一瞬、ぐっと首に力がこもる。濡れた眼が、私を見ていた。

、と名を呼びながらそっと彼女の頬に触れる。温い温度の滴が手を伝った。

するりと首に回されていた指は離れ、は自分の両手で顔を覆ってしまった。

ゆっくり起き上がって、彼女を抱きしめる。震える肩が、いつも以上に儚く感じた。



「急に、いなくなったりなんて しないで」



私の背に腕を回しながら彼女が言った。

ええ、と私が頷けば背中で服を握る彼女の手の力が強まる。

ゆっくり彼女の首筋に口付ける。すこしびくり、と動いた肩はすぐに離れ、彼女の両手は再び私の首に回された。

涙が流れるのを止めずに、じっと私を見る彼女の髪を撫でる。



「私が殺すから死なないで」



そう言って彼女は手を離し、私に抱きついた。首に、彼女の涙が伝うのを感じる。

ゆっくり、でも力を込めて抱きしめる。



「ええ、約束します」



そう言うと、彼女はすこし笑ってから、の方から唇を奪ってきた。

さっきとは逆に、私が彼女を押し倒す形で彼女に口付ける。

約束を守ってね、と呟く彼女に対して私の口から零れた言葉を聞いて、彼女は嬉しそうに微笑んで、両腕を背中に回して言った。



「愛してるわ、L」

「ええ、私もです」





されるならばあなたの
(貴女と共にきたい、から)















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いちゃいちゃさせたかったんです。温度低めで。

すごく遠回りな「生きて」っていう願い。