「竜崎! あっち!次あっち!」
「・・・・・・・・分かりました」
春某日。
世界の名探偵L・・・───、竜崎は恋人と遊園地にいた。
捜査はどうした、と聞きたいところだが 今日はと松田(とくに松田)が『毎日出勤してるから、休みが欲しい』とごねたので 渋々、一日休みを設けたのだが。
「竜崎ー」
「何ですか? なにかまだ不満でも」
「うわあ嫌味な言い方。 明日の天気は?」
「・・・晴れ、みたいですね」
それが?、といいかけたとき、はポケットから二枚のチケットを取り出して竜崎の目の前に差し出した。
竜崎はそれに書かれている文字を目を細めて読む。
「・・・遊園地優待券?」
「いえーす! もらっちゃったんだー。 行くよね?」
「・・・私はいいです。 そういうものはちょっと・・・」
「ふーん、そっかあ・・・」
何か言いたげな目をして、はそっぽを向いて呟いた。
「じゃあいいよ、月君に連れてってもらうから」
「・・・・・・・・・・・・・は?」
「あ、松田さんでもいいかな。 第一チケット松田さんからもらったし」
「え、 ?」
竜崎がカップをテーブルに置き、の方を掴み振り向かせると はにっこり、と笑う。
「だって竜崎 行ってくれないんでしょ?」
・・・で、今に至るのだが。
「何でそんなに楽しそうなんですか」
「何でだろうねえ」
「楽しいですか」
「うん。 とっても。 竜崎と一緒だし」
「え、 」
竜崎が驚いてを見ると、はパンフレットとにらめっこをしていた。
「・・・人がちょっとこう、ときめいたら本人はパンフですか・・・」
「ん? 何か言った?」
「いえ・・・。 どうかしたんですか?」
「んー、このアトラクションなんだけど、二時間待ちだって・・・」
「二時間ですか」
「んー。 乗りたかったけど、しょうがないね」
「・・・ちょっとまっててください」
すると竜崎は列を外れて、スタッフのほうへ歩いていく。
そして、なにやらスタッフと話し始めた。
「いや、竜崎? 話しても待ち時間は短くならな・・・・・ あれ?」
が見ていると、スタッフは最初渋い顔をし、ちょっと驚いた顔をしてから 感じからして上司だろう、そういう人を連れてきた。
そして、竜崎はその連れてこられた偉そうな人に何かを言った。
そして電話を借り、竜崎が何か話してからその偉そうな人に電話を渡す。
すると途端、その偉そうな人は部下の頭を引っつかみ一緒に頭を下げさせ、何か紙を手渡して去った。
竜崎が、その紙を持っての元へ戻る。
「あの、竜崎 一体何して・・・」
「さあ、行きましょう」
ぐいぐいと手を引っ張り、列を越してゆく竜崎。
「え? 駄目だよ順番守らなきゃ」
「いえ、もう社長に承諾いただいたので」
「・・・は?」
「これがあれば順番なんて関係ありません」
そういいながら竜崎が見せたのは、さっきの紙。
そこには、英語で分からないが、とりあえず最後に日本語で 多分さっきの偉い人が書いたんだろう字で、
『社長命令』
と書いていた。
「・・・何コレ」
「ここを運営してる社長に連絡を入れてもらって、『買い取って老人ホームにする』と言ったらこの紙をくれました」
「・・・・・・・・・・・・犯罪じゃん」
「そうですか?」
「犯罪だよ、職権乱用だよ やばいよ」
「別にいいじゃないですか? まあ、が嫌がるなら、別にこんな紙いりませんが」
「えええ、破っちゃうの?」
「嫌なんでしょう?」
「・・・破ったら、二時間?」
「ですよ」
「・・・・・・・・・や、やっぱつ 使わせてもらおう」
「はい」
竜崎の『紙』で有意義に、少し良心痛みつつ は様々な乗り物に乗りとおした。
良心痛んだといっても、二個目の乗り物に乗ってそんな心は吹っ飛んだのだが。
「あー、楽しい」
「・・・疲れ ました」
「やっだなー、竜崎年寄り? ジェットコースターツアーしたくらいでそんな」
貴女は人間ですか・・・、と呟く竜崎をよそに、は上を見上げる。
「竜崎、しめにあれのろう」
「まだ乗るんですか! もう絶叫形は嫌です」
「違うよ、あれ」
の指差す方向は、
「・・・観覧車ですか・・・」
「わわわわ! ちょっ!見て竜崎!人間がちっさいよ!」
「・・・貴女一体いくつですか・・・」
「ほらほら! パレードやってるよ!うわわー!」
「・・・もっとこう、観覧車ならムードとか・・・」
「ひゃー! 高い高い!もうすぐてっぺんだね!」
「・・・もういいです」
一人ため息つく竜崎とは反対に、久しぶりの観覧車に一人はしゃぐ。
「楽しいですか」
竜崎がそういうと、は観覧車に乗って始めて窓から目をそらした。
「うん、楽しいよ」
「そうですか」
「竜崎と何気に初デートだしね」
「・・・そうですね」
「今日はありがと、竜崎」
今日一人 自分ばかり
悔しい思いをしているような気がする。
自分ばかり、ときめかされて。
悔しいから、
君に
「・・・・・・・・・っ」
「今日一日の仕返しです」
椅子からずり落ちそうになりながら、口を手で押さえ反対側に座っている竜崎を見つめる。
顔を紅くしながら驚いている彼女の姿に満足したのであろう、見つめられている竜崎はにっこり、と頬を緩ましている。
「なななっ、何もしてないよ!」
「今日一日分のときめきの仕返しです」
「は?!」
「、」
竜崎は反対側で口を押さえている愛しい彼女を、抱きしめて、
愛の言葉を囁きながらもう一度
口付けした。
恋人日和
「ていうか、観覧車でちゅーってベタじゃない」
「そうですか? いいじゃないですかこれこそ『恋人』っぽくて」
「・・・竜崎、あんた私の少女漫画読んだでしょ。だからでしょ」
「いえ、を愛すからこそですよ」
「・・・(お願い耳で囁くのやめて)」
END
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後書き
久しぶりすぎる竜崎。
ありゃりゃー、撃沈。
駄目ですな。
最後のほうは割りと好きなんですが、流れ、テンポ悪いな これ
いつか書き直しするかもしれません。