なんとなく。

いや、本当はわかってた。

わかってたんだよ。

それでも、いいかなって思ったんだ。







春の風









「今日で学校最後なんだよな」

「うん。実感沸かないよね」



何か不思議な感じだよな、と静雄は笑った。

そうだね、と私も笑った。



「なんかあっという間だったな」

「そうだねー」

「何だかんだで楽しかったな」

「ほんとにね」



式までの時間、教室は別れを惜しむクラスメイトで賑わっていた。

写真を取り合ったり、卒業アルバムに寄せ書きを書いたり、昔話に花を咲かせたり。

そういえば折原君を見ないが、まあ、そのお陰で静雄が大人しいので良いとしよう。



出席番号順で並んだ机。先生のおめでとうという字が描かれ、友情は永遠だ!と誰かが書き足している黒板。時間割を貼られていた壁。授業中の落書きが消された机や教室の隅。

すべてが、思い出に溢れ、すべてが、懐かしい。



隣を見ると、静雄も色々思い出しているのかぼんやりとクラスメイトで賑わう教室をぼんやりと眺めていた。



それから、お互いまた話したり、友達と写真を撮ったりしている内に折原君が表れて静雄の機嫌が悪くなったり、わいわいしている間に担任のそろそろ移動しなさい、という召集の声がかかって皆体育館へ。

一応常識はあるのか、今日は折原君もあまり静雄を挑発しないので先生も安心しているようだ。





そして、あっという間に私たちは高校生を終えた。





「静雄はさ、卒業してどうすんの?」

「んー、まだ決めてねぇ。まあでも、人生は長ぇし大丈夫だろ」

「ま、そうだね」



式の後の生徒達は、涙を流している子もいれば、笑っている子もいる。

さっき教室でもしていたのに、また写真を撮ったり話したり笑ったり、泣いたり。

3月に入ったばかりの風はまだ冷たい。

だが、陽は春のように暖かい。

陽の光で泣いている子の頬がきらきらとして見えた。



「ねえ、静雄」

「うん?」

「今度のお別れ会、行く?」

「バイト入ってたから行けねぇんだよな」

「そうなんだ」

「ああ。は行くのか?」

「うーん、私もバイトが入ってたるかもだからわかんない」

「そうか」



静雄の携帯が鳴って、静雄がそれに出る。

会話の内容からして、田中先輩だろう。



「トムさんが今から飯奢ってくれるらしい」

「よかったじゃん」

「おう。・・じゃあ、」

「静雄」

「何だ」

「あのね、」











報われないだろうなあ、と頭でわかってた。



わかっていた。



だけど、どうしてなのか。私は君に恋をした。





授業中に先生の話にこっそり一緒に笑ったりした。

寝てるのを、こっそり眺めたりした。

ありがと、って言われたくて持ってたお菓子を分けてあげた。

小テストの前に慌ててテスト範囲を見てるのを笑ったりした。

問題を出し合ってテストでヤマが当たったら喜んだりした。

席が離れたら寂しくて仕方なかった。

おはよう、って言えたら幸せだった。

ばいばい、って返ってきたら嬉しかった。



寝起きの寝ぼけた顔が好きだった。

折原君と喧嘩して機嫌悪そうな顔に絆創膏を貼られてるのを見てるのが好きだった。

君の笑った顔が大好きだった。



君に会えるから、学校が楽しかった。









「・・・またどっかで見かけたら話しかけるから」

「おう。また皆で遊びに行こうな」



私が笑うと、静雄も笑った。



「じゃあね、ばいばい 静雄」

「おう、またな 



手を振って別れを告げると、静雄も軽く手を振った。

静雄が見えなくなって、我慢してたのを一気に吐き出すように、涙が溢れた。



君の前じゃ泣きたくなかった。

最後は笑顔でいたかったから。

だって、私たちは友達だもの。



「ありがとう、幸せだったよ、私」



涙を乾かす風が、少し。暖かかかった気がした。









「好きだよ」

「・・ごめん、 ・・・・でも嬉しい。ありがとう」

「うん、最後だからちゃんと言っておきたかったんだ」

「・・ありがとう」











君が大好きでした。

ありがとう、さよなら。





















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悲恋ですいません。



元ネタは自分です。笑 嘘じゃないです。笑



終わった後に「ああ幸せだったなあ」と思える恋は素敵だなあと思います。

みなさんも幸せな恋をしてください。