愛故、
時計台の下というのは基本、何処の地域に行っても待ち合わせ場所になっているらしい。
勿論、理由はただ単に「時計台は大きくて目立つから」というものだろうとは思うが、果たして本当にそれでいいのだろうか。
毎日のように流れるニュース最後の手短な無駄話によると、某駅では折角ホームに待ち合わせ専用のシンボル像を置いたというのに、そのすぐ傍にある巨大な時計台が目だって目だって仕方ないので待ち合わせの現状は一向に像のほうに移動しないという。
元々時計台というものは時間を確認するためのものであって、待ち合わせ用の場所ではない気がするのだが・・・。
・・・と考えつつも自分自身、待ち合わせのために時計台の下のベンチに座る竜崎は、携帯の待ち受け画面をチェックしていた。
携帯の待ち受け画面というよりもその視線の先にあるのは待ちうけ画面に表示されている大文字のデジタル時計なのだが・・・って、それでは先程の彼の思想と全く矛盾しているではないか。
無論、携帯で時計を確認して、時計台のほうは単なる待ち合わせ場所にすぎないという考え方は、現代社会ではほぼ常識的なものになっているが・・・全く、これだから今の世の中は狂っているのだ。
さて、本題に入ろう。
竜崎が憂鬱そうに携帯の蓋を開け閉めしながら待っている人物だが・・・彼女はLの恋人だ。
つまり、竜崎はこれからデートをする、ということになる。
どうやって探偵というひっきりなしに事件捜査をする仕事の休暇をとったかは謎だが(竜崎のことだから勝手に有給休暇をとった可能性も・・・)、とにかくこれがサボりであることは丸わかりである。
まあ、理由が久しぶりのデートっていうのも・・・わからないわけでもないんだけどね。
それにしても、彼女の到着は遅いものだった。
予定時刻は午後1時だったというのに、このくそ寒い中冷えたベンチに座りっぱなしで待ちくたびれたLの瞳に彼女の影がようやく映りこんだのは、なんとそれから1時間近くオーバーした午後1時54分。
理由はともあれ、連絡のひとつやふたつくれたっていいだろうがこのあま・・・とかなんとか思いつつ、彼女が来るのを心待ちにしていたLは、数十メートル先の曲がり角から現れた彼女に向かってゆっくりと歩き出す。
一方の彼女は懸命に走りながら何かを発しているようで、そのひどく疲れた様子からは、おそらく時計台から歩いて数十分はかかる自宅から一時も休まず走り続けてきたという彼女の努力が多々と感じられた。
「りゅうざ・・・き・・・おっ、遅れて・・・ごめ・・・」
「そんなに息を切らして・・・一体何があったんですか?」
何とか傍まで辿り着いたものの、荒い息を整えることができないまま自分に話しかけようとする彼女の体をそっと抱きしめ、優しい手つきで背中を撫でてやる。
本当・・・いつもの竜崎からは想像できないような甘いフェイスで。
「・・・竜崎・・・ありが・・・と・・・」
数分して彼女の呼吸がようやく整えられてきた頃にはもう時刻は2時を過ぎていて、この様子と時間じゃあもう遠いところには行けないな、と竜崎は一人、ため息を吐きながら彼女の言い分をそっと聞いてやることにした。
「・・・改めて言うけど・・・遅れて本当にごめん・・・」
通常は許せない行為だが、彼女は自分の中で唯一守るべき愛しい者であるし、こんなにも深深と謝ってくれてるのだがら今日のところは見逃すしか選択肢は残っていない。
竜崎は小声で「別にいいよ」と零すと、いつになく優しい面持ちで彼女の冷えた頬を両手でそっと包んだ。
「あのね・・・本当にくだらない理由なんだけど・・・実は、化粧に手間がかかっちゃって。それで・・・こんなに竜崎のことまたせちゃってさ・・・ごめんね・・・」
でた!待ち合わせに遅れた女がよく言う台詞ベスト10上位にランクインする「化粧に手間がかかちゃった」!
しかし、今回は本理隠しのためではなく、その綺麗に塗られたピンクのリップグロスや整えられた瞼や髪からしてどうやら真実のようなので・・・うん、彼女を信じよう。
「ごめん・・・久しぶりのデートだからさ、竜崎に変な格好見せたくないと思って・・・」
「まあ、そのことはもういいです。私も気にしてませんから。ほら、何処に行きたいですか?の行きたいところを言ってください・・・は化粧なんてしなくても十分可愛いのに」
聞こえる聞こえないかの瀬戸際のようなか細い声で言ったつもりだったが、どうやらの耳にはばっちり行き渡ってしまったらしい。
竜崎の甘い発言に彼女は何も言わずにそっと振り返ると、自慢の太陽に似た明るい笑顔を見せ、竜崎の心をからかうように軽くくすぐる。
「さーてと!じゃ、行きますか!」
「行き先が決まったんですか?一体何処に・・・」
「何処って・・・デパートに決まってんじゃない!今日は竜崎にたんまりおごってもらうんだから!」
人が変わったかのようにいきなり気分をブルーからハイに転換したに対し、少々呆れ顔を見せる竜崎だったが・・・そんな風に毎度毎度自分を振り回すのほうが自分は好きだという気持ちを思いだし、彼女に手を引かれるままに強く足を進めるのだった。
女の子は元気が1番!相手を振り回すくらいが丁度いい。
昔、何処かで誰かが言っていたのを聞いたことがある。
元気でいつも自分を振り回すこそが・・・世の男性の理想像なのかもしれないな。
だから、化粧で遅れたって許すし、いきなりケロっとなっちゃうところも彼女のチャームポイントのひとつだと思う。
まあ、それはきっと、自分がそれだけのことを愛しているってことを証明していることにも繋がるんだろうけど。
愛故の贔屓、とでもいうのだろうか。
だとしたら自分は・・・そうとう色情に溺れているな。
前進する足が速まる。
の元気そうな声が耳に響く。
頭の中でははじめに考えていた無駄話や、先程口走ってしまった甘い台詞が本人の耳に届いてしまったことを未だに考えていながらも、今日も彼女に振り回されるであろう自分の姿を想像しては楽しんでいる自分が馬鹿みたいに思えて、そっと、小さな笑みを零した。
>>白亜さん
遅くなってしまってごめんなさい。
改めまして、相互ありがとうございます。
リクエストが「振り回され気味へたれL」だったので、取り合えずいきなりケロっとなっちゃう彼女に振り回される竜崎さんを書いてみたのですが・・・なんか全然へたれじゃありませんね。むしろ超理屈っぽい・・・。
イメージと違って本当にごめんなさい。
ちなみに最初のほうの時計台に関するぼやきは文の飾りつけのために私の意見をいれてみたという完全意味なしの部位なんですが・・・ああ、なんか本当邪魔でしたね。ごめんなさい(;
もうね、こんな駄目文でよければ煮たり焼くなりなんでもしてOKですので。
・・・勿論返品を受け付けてます(;
ではでは、私の勝手な妄想文で誠に申し訳ありませんでした・・・
+++++++++++++++
白亜の叫び
ぎゃーっっ!!!!!!!(@さゆちゃん
真歌様に頂いてしまいましたよ 竜崎夢!
超甘 激甘 キュン死 萌え死!
竜崎格好良すぎますね!
も・・・まじで鼻血吹いたらどうしよう(待て
格好いい・・・ そして振り回され具合が最高。
律儀に待っていてくれる竜崎が本気で格好いいです。
そして「化粧なんてしなくても・・・」は、もう 犯罪レベルの甘い言葉ですよ!
とけるーとろけるー 甘いー!!!
本当に素敵な夢を有難うございました!!!