「りゅーうーざきー!プレゼントだよー!」
きょとんとした表情を浮かべながらもその手元には期待と不安が入り混じった不思議な感情が表れていて。
目の前でその光景をにたにたしながら見ているあたしなんか気にも留めずにプレゼントの包みを開けていくその様は、いつになく真剣味があって乙女のハートをいとも簡単にさらっていくというのに。
「チョコ」、と一言その口から漏れると同時に、竜崎は彼の背後の壁に掛けられているモノクロのシンプルなカレンダーをちらり見、そして今度は意味ありげに微笑するあたしの顔をものめずらしげにじっと見つめた。
「 さん、これは・・・」
「今日はバレンタインでしょ?だから、チョコ。わかった?」
「そんな常識的なこと、言われなくてもわかっていましたよ。ただ・・・バレンタインというのは女性が好意を持つ男性にチョコを渡す日ですよね。つまり、これは さんが私のことを好きだといっているのと同じことになりますが・・・そう解釈してよろしいんですよね?」
言われなくてもわかっていましたって・・・シケた面して言ってるけど、じゃあさっきわざわざカレンダーを確認したのは何だったんでしょうねえ。
「はあ!?義理チョコに決まってんじゃん、義理だよ義理!ぎーりー!」と嘘音を力いっぱい発してやると(本音が言えるはずもなくて)、竜崎はやや悲しげな面持ちになったあと・・・折角開けたミルクチョコレートに一口も手をつけないまま、蓋をして、脇にある小さなデスクの上にそれをそっと置き、あたしの姿を映し鏡みたいに動き一つみせず、ただじっと、底の無い瞳で見据える。
「果たして本当に義理ですかね」
「な、なんで・・・?」
「だってこのチョコ、ハート形ですよ?義理チョコにハート形なんて、普通入れますか?」
「別に、義理チョコにハート形入れたって悪くないでしょう。もっと言えば、今の時代そんなの普通だよ」
「そうですか・・・それは残念ですね」
「え?それ、どういう意味・・・」
最後まで言葉を紡ぐ間もなく、竜崎は立ち上がると、先程デスクに置いたチョコの箱を包みごと手に取りよたよたとまるで病人のような背格好で、部屋を出て行こうと隅にあるドアに向かって歩いていく。
「りゅ、竜崎・・・」
「安心してください。義理でもちゃんとホワイトデーのお返しはしますから」
それだけ言って、彼は其処から姿を消した。彼が戻ってくる様子は何処にも見当たらず、悔しくなってあたしはじだんだ踏んだ。
何であの時本音を言わなかったんだろう。言っておけば、こんなに胸が張り裂けるよな想いはしなかっただろうに。
部屋を去っていく際に浮かべていた、竜崎の、あの、寂しげな表情が脳裏に蘇る。
あたしが欲しかったのは、彼の笑顔だったのに。
「・・・本命なんだよ・・・竜崎のことが好きなんだよ・・・」
その想いが届くことは、無かった。
ハート形のチョコに紡ぐ
(お馬鹿な さん、私はずっとドアの向こうで聞いていましたよ。そして、チョコが本命だということもわかっていました。・・・ さんはすぐ顔にでますからね。わかりやすいんです。だから さん。私の気持ちも何処かでちゃんと受取って欲しいんです。完全じゃなくてもいい、綻んだ部分だけでいいから、拾ってあげてください。そうしたらきっと、私達の愛も報われるはずでしょうから)
TO.読者様
なんか折角のバレンタイン夢なのに暗くてすみません。
一応ハッピーエンドなんですがかなり切ないですね。ヤバイですね。
フリーということになっていますのでこんな駄目作でよければどうぞ煮るなり焼くなりお好きな方法でお持ち帰りくださいませ。
報告は任意ですが、してくださると管理人が喜びます(あっそ
ただしサイトに載せる場合は真歌が書いたものとわかるような記述をお願いしますね。
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白亜の叫び
掻っ攫ってまいりましたよ、フリーvvvvv
りっっ 竜崎ーvvvvvvvv
も 格好良すぎます、一生大好きです。
こんな夢がかける真歌様を心から尊敬します。
フリー有難うございましたvv