まだリドルと呼んでいた時｡
君が口にした言葉はその時の私には怖かった｡
｢いま な、んて リドル｣
｢リドル、じゃないって言っただろう？｣
初めて、彼の本当の表情を見た｡
いつもの人懐こい笑顔は無かった｡
そこにあった笑顔は冷たかった｡
｢君は、来てくれるかい｣
何も言えなかった｡
何が怖いのかもわからないまま､首を振った｡
｢･･･そう 残念だ｣
｢ご、 めんな さい･･･｣
｢いいよ謝らなくて｣
そう言いながら､リドルは私のことを抱き締めた｡
｢ご･･･め 、なさ ･･･｣
｢いいって言ってるのに｣
くすくす､と笑う声が聞こえる｡
さっきの目が頭から離れない｡
あんなに深い紅を､初めて視たかもしれない｡
残像が瞼の裏でチラつく｡
背中に回された腕の力がいつもより強く感じる｡
｢でもね、｣
しばらく沈黙の後､急に声を出され少しだけビクついた｡
驚いたと同時に､耳元で囁かれる｡
｢･･･ え､ 何が ？｣
その囁かれた言葉にそう返すと､腕を背中からはずしてリドルはどこか満足げに笑った｡
｢だから､遅かれ早かれ 君は気付くよ｡ きっと、ね｣
｢え、････と 何で？｣
リドルは笑った｡
冷たい紅い目は私を見て、どこか確信的で､どこか満足していた｡
｢だって君はもう僕のものだからね｣
｢い、た い｣
考えるより前に､一人で口が動いていた｡
あまりの痛さに視界が濁る｡
｢そのうち治る｣
軽く流して､ヴォルデモートは杖を手首から離した｡
｢何か火傷したみたいに痛い｣
｢俺様は知らんな やってないから｣
｢･･･やれば？｣
｢必要ないだろ｣
特有の無慈悲な笑みを浮かべて､痛む手首を掴む｡
｢いっ･･･！｣
｢そんなに痛いのか｣
｢当たり前でしょ､刺青みたいなもんなんだから｣
｢そうなのか｣
面白そうに見ながら､また彼は笑う｡
細い指が､自分の手首に絡む｡
ひんやりした体温が､手首の血管から感じた｡
細い指の間から､毒々しい髑髏が顔を覗かせる｡
周りの蛇が､さげずむ様に自分を見ていた｡
ひんやりした温度が､手首ではなく首筋に伝わる｡
変わり果てた手首から目線を戻すと､ヴォルデモートが至近距離で居た｡
｢･･･な に｣
｢ いや別に｣
｢理由なしでこの距離はちょっと｣
｢じゃあ作ればいいのか、理由｣
｢それもちょっと｣
適当にあしらいながら､体をずれさせ遠ざかる｡
ヴォルデモートは少し迷ったような顔をしてからまた、笑った｡
｢だが思ったとおりだな｣
隠すように袖で傷を覆っているとヴォルデモートが呟いた｡
｢何が？｣
｢お前がこうなることだ｣
｢････ああ、｣
袖の上から傷を握る｡
まだぴり、と痛みが走る｡
｢思いっきり振ったくせに、な｣
｢････あれはまだ心の準備というか何というか｣
｢怖がってたからな｣
返す言葉が出てこない｡
彼の言葉はいつも的をつく｡
昔も今も｡
｢でももう、気付いちゃったから｣
呟きが聞こえたのか､ヴォルデモートは珍しく満足げに笑いながら私を抱き締めた｡
｢言っただろう､ ｣
あの日の言葉が､またこだまする｡｡
｢ ･･･、そうだね｣
そういって､目をつぶった｡
It's too late now, I'm afraid
.
あいにくもう遅すぎるんだよ
END
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白亜の中のリドさんヴォルさんは二つに分類されてます
面白いどっか阿呆っぽい白帝王と､
シリアス俺様魔王様な黒帝王｡
これは黒帝王が書きたかったんです｡