別に僕はえいえんのあいだとかそういう類の言葉には興味はないし、信じているわけでもない。



それゆえに僕は別に付き合うということに対して執着は持っていない。

と、言うよりいつも僕は誰かに「あいしてる」と言われてもう正直疲れきっていたから「そう、わかった」と笑えば相手がいつも勘違いをして僕は 恋人 になるわけで、決して僕からのあいではなく。

だから僕は付き合っては最終的に別れるこの 恋人 を正直快くは思っていなかった。

ほら、僕がどんなに微笑んでも 恋人 の彼女たちは言うのだ、「貴方を独り占めしたいの」って。

そんなことを言われて困るのは僕なのに、決まって泣くのは相手のほう。

だから僕は言うのだ「君がそう泣くのなら もうおしまいだね」って。

別れ話を切り出すのは大抵向こうで でも「さよなら」って言うのはいつも 恋人 のほうなのにいつも 恋人 たちは泣いていた。

だから実際、どっちが振って振られたのかいつも僕にはよく分からなかった。

そんな風に、何回も何回も同じことを繰り返して僕はさらにえいえんのあいというものを信じなくなっていた。

別に、失うのは怖くない。

手に入れるのもそこまで執着しようとも思わない。ただひと時の流行のように僕の傍に誰かがいてそして去ってゆく。

恋愛を あい、という名の 恋人 という肩書きを僕はそう認知していた。別に必要もないし欲しくも無い、失っても怖くも無い。

ただ、ひと時傍にいるだけの 。



でも今僕は、 ひどく、うろたえていた。



「────リドル 、」



つう、と頬を濡らす涙を拭くことも忘れてはぽたぽた泣いて、僕の名前を苦しそうに いとおしそうに、呼んだ。

見慣れたはずの 恋人 の泣き顔。

だけどどうして僕は、こんなにも焦っているのだろう。



「リドル、 わたし は 、」



目を伏せたままは続ける。 前髪で見えない顔からは光に反射した涙がぽつりぽつりと、落ちて彼女のスカートに染みこんでいた。



「貴方を 独り占め、したいとは言わない  でも、」



初めて聞いた台詞。僕が何も言わないでいるとは僕の手を握って僕の目を見た。

涙で潤んだ目はとても綺麗で、思わず息を詰めた。



「私は、 リドル 、貴方と一緒にいた い 」



そう言っての目から涙が溢れて、はまた顔を伏せてしまった。

その涙が僕の手の甲にぽた、と落ちて伝って彼女のスカートに再び染みこんでゆく。

僕はどうすることも出来ないまま、 何故か唇が勝手に動いて どうして急にそんなことを言ったんだい、と言った。

はそれを聞いてちょっと唇を閉じて、悲しそうに言った。小さな、目の前の僕でさえ聞き取りにくい声で。



「だ、って リドル、 リドルはもうすぐ 私の傍から居なくなってしまうんでしょう?」



ぽたり、僕の手の甲に涙が落ちる。

どうして、と聞くと彼女は微笑んだ。 とてもとても、苦しそうに。

そうしては泣き始めて初めて、手で涙をぬぐった。 そして一間置いてから、僕を見た。



「だって分かるもの。 貴方はきっと、ここから 私の傍から居なくなってしまうんでしょう。 そうしてきっと、もう私とは会うつもりは無いんでしょう?」



僕は何もいえないまま、の目を見つめ返した。 涙は溢れていなくとも潤んだままの目を。

その目があまりにも綺麗過ぎて、僕は何故か苦しくなって思わず目を背けた。



「リドル、貴方は何を望んで 何をしようとしているの?」



僕が何も答えられないままでいると、辛そうな声は続く。



「私は連れて行ってくれないの?」



その言葉に思わずを見ると、は そうなの、と呟いて微笑んで 俯いた。

涙を拭わなかった方の手は、僕の手を握っていたけどするり、ゆっくりと僕の手を離した。

本当に何故だか分からないけど僕はとても胸が痛くて、どうしたらいいのか分からなくて、声が出なかった。



「  分かった、ごめんなさい。我侭言って」



ふいに、が沈黙の後に言った。顔を上げては微笑んで、僕を見た。



「さよなら、   ね」



そういうの目はとても泣きそうに潤む涙で揺れていた。

その言葉が僕の頭の中でこだました。

言いなれた言葉。聴きなれた言葉。 だけど今は、 。



「リドル、 私は 貴方が、だいす きだったの 、」



目に溢れんばかりの涙を溜めて、はそう言って微笑んだ。

聞きなれたあいの言葉。信じてもいないあいの言葉。 だけど今は、こんなにも 僕を 。



「さよな 、ら・・・・・」



別に、失うのは怖くない。

なのに僕は、気づかぬうちにを引き寄せ抱きしめていた。

別に必要もないし欲しくも無い、失っても怖くも無い。 はずなのに、さよならという四文字がとても今、僕には怖く思えた。

抱きしめたまま黙っていると、が小さく、僕の背中で服を握り締めたのが分かった。



「  どこ、にも 行ったりしないで 。 リドル、」



貴方を失うのが怖い、とは涙声で続けた。

別に僕はえいえんのあいだとかそういう類の言葉には興味はないし、信じているわけでもない。

恋人なんて所詮肩書きでしかない。ただひと時の流行のようなもので。



だけど今僕はそのひと時のものでこんなにも焦りとまどい怖がって いる。

どうしてかは分からないけれど 涙を流しているがとても小さくて、壊れそうで  傍にいたいと思った。

だいすき、その聞きなれた言葉が さよなら、その言葉とともにぐるぐると頭を駆け巡る。



失うのは怖くなかった。さよならは怖くなかった。

───でもを失うのは    、怖い。

別にえいえんのあいだとか興味はないし、信じているわけでもない。

───でも、 のだいすきは 暖かく て。



「────リドル、」



いとおしそうな でも苦しそうな僕の名前が聞こえた。



別に僕はえいえんのあいだとかそういう類の言葉には興味はないし、信じているわけでもない。

でも 、 僕は。



「  、」



体を離して口づけて、涙を伝うの頬を僕の手で拭う。

そうして僕は何故か分からないけど微笑んだ。 でもいつものその場限りの微笑じゃないのは 僕はなんとなく気づいた。

は少し状況についていけていないらしく、潤んだ目で僕を見つめていた。 その目がとても今の僕にはいとおしい。

えいえんのあいとかそんな甘ったるい嘘なんて信じても無いけれど。 僕は、



「愛してる、。  ───愛してる」



君になら 誓ってもいいと思ったんだ。

えいえんのあいなんてそんなもの。


(僕は君を愛してる、 そう気づいたから)





────あら、おかえりなさい ヴォルデモート

────ああ、 ただいま。 














Fin









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かなりお久しぶりリドル。



甘いのかこうと思ってたのに 何だか良く分からないものになってしま、った・・・!

初めてリドルが人を好きになったという話。 ・・・になっていない気がするのですが・・・



毎回素敵なメールを下さり、とても男前で紳士で可愛いリドルや死喰い人達を書かれる神津さまへ捧げます!

相互ありがとうございました!



白亜