「ちょっ、やだやだやだやだっ!」

「うるせーな、ちょっと黙ってろ」

「誰か助けて変態に拉致られるー!」

「止めろ、いや止めてくれ そんなの言ったらマジでリリーとかリリーとかリリーが来るから」

「じゃあ降ろしてよ!」

「やだ」




大声でリリーに助けを呼ぶ前に、シリウスに担がれ寮を飛び出す。

廊下は暗くで、なんとか月の光でうっすら見える程度。


しかしシリウスはまるで見えているかのようにするすると闇をすべる。



「・・・馬鹿犬」

「その呼び方止めろ」

「こんな夜中に嫁入り前の女の子を連れ出すなんてどういうこと?」

「・・・・何だよその言い方」

「穢したら死と思え、ってこと」

「・・・・・・・・そんな事しねぇよ つーかお前なに考えてんの」

「万年発情期ともっぱらの噂のシリウス・ブラックに拉致られたらそう思うよ」

「俺ってお前にそんな風に見られてるのか」

「さあね」



相変わらず担がれたまま、暗い廊下を進む。

担がれている身だが、疲れないのかと少し思う。

シリウスと言い合いをしている内にもうどこの廊下なのか分からなくなってしまった。



「ねえ、どこ連れて行くの?」

「ものすごく良い所」

「・・・・・やっぱり発情期、」

「だからちげーよ」

「じゃあ何処」

「言ったら面白くないだろ」

「考えることが低レベル」

「・・・お前より頭良い」

「うるさい思春期」

「・・・それは弁解しないけどな」

「発情期」

「それは違う」



急にシリウスが歩くのをやめる。


そして担いでいた私を床に降ろし、何かガタガタと音を立てて何かを探し始めた。

暗くてよく見えない。


「・・・何やってんの?」

「いや、ちょっと・・・  あ、あった」


シリウスが見つけた物を月明かりでなんとか見る。

しかし部屋の隅のほうらしく、まったく自分からは見えない。


「ねえシリウス、それって何?」

「上見とけよ、上」

「は?」

「いくぞ、 」



カチ、と何かを押す音がする。

ガコン、と音を立てて上の天井が大きく開く。



明るい月が、数多の星に囲まれながら真っ暗な海に浮いていた。


「な にこれ・・・」

「いや、なんかマグルので星空を天井とかに写すモノがあるらしくって やろうと思ったんだけど、
ホグワーツって機械駄目だろ? だからジェームズ達と天井改造して開くように作っちゃった ってわけだ」

「作っちゃった、って・・・ 簡単に言うけど無駄にがんばったでしょ」

「いやー結構天井って丈夫なんだな」

「馬鹿でしょ」


「でも綺麗だろ」


うん、と首を小さく縦に振る。



「これ、みんな知ってるの?」

「いや、俺たちと お前だけかな」

「そうなんだ」

「良い所って言っただろ」

「そうですね  ・・・ごめん」

「いいよ別に」




一番高い塔だからだろうか、空がいつもより近い気がする。


「綺麗、」


知らずに言葉が口から漏れる。

それを聞いて、シリウスは満足げに だろ、と笑う。



しばらく上を見つめていると、シリウスが少しためらいながら口を開く。


「あのさ、 お前って さ」

「え なに?」


「・・・すっ、好きな奴とかいるのか」


星から目をはずし、隣に座る人物を見る。

その人物も、自分を見ていた。


「え、    ・・・・・・え?」

「・・・いや、別に 答えたくなかったらいいんだけど、よ」


そう言ってシリウスは目線を空に戻す。

月で青白く写された頬が、すこしだけ紅く見えた。



「いるっていうか、片思い? してるっていったらしてる、け ど」


空に目線を戻しながら、自分で体の体温が上がったのを感じる。

シリウスはちょっと黙ってから、そうか と呟いた。


「なんでそんな事聞いたの」

「・・・いや別に」

「なんで」


「・・・誰もいなかったら、」

「居なかったら?」


「  俺と、」

「シリウスと?」





シリウスが続きを言ったと一緒に、後ろで本が崩れ落ちる音がした。

同時にそっちを見て、空へ目を戻す。




「・・・さっきなんて言ったの?」

「うるせーな」

「俺と、なに?」

「うるせーな」

「とか言って、聞こえてました」

「だからうるさいって・・・・・・・・・・・・  ・・嘘だろ」

「嘘じゃないよ」

「え、    おま え」



シリウスが目を見開いてこっちを見てるんだろうなあ、と突き刺さる目線で感じる。

月がさっきより、傾いていた。



A Moonlit Tower
「私のね、好きな人ってシリウスなんだよ」









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黒犬。
なんていうかいろいろ書きたくて詰め込んで削りまくった結果。 不完全燃焼。