「リーマスってさあ、」 ふいに、目の前に座る彼女が言った。 本から目を上げると、お菓子を手に持ちながら彼女はじっと僕を見ていた。 「なに?」 「ううん、ちょっと」 「ちょっと、何」 「シリウスとかジェームズとか、よく恋沙汰の話聞くじゃない?」 「まあ、ジェームズは特定だけどね。シリウスはもうしょうがないんじゃないかな」 「リーマスのそういう話は聞かないなあと思って」 なるほどもっともな動機である。 あの、2人と一緒にいる割りにそういえば自分はたまに告白されるのはあれ、そんなにそっちの話題には出ていないかもしれない。 「だからね。 リーマスって、好きな子いないのかと思って」 「好きな子? うーん・・・恋愛感情の好きはない、かなあ・・・」 一通り、目の前にいる彼女を含め女子を思い浮かべてみたがぴんとこない。 彼女は何か考えるように暫く床をじっと見つめていた。 僕は本に目を戻した。 「ねえ。じゃあリーマス」 さっきより近くで声がして、目を上げると目の前に彼女が立っていた。 僕がぽかんと彼女を見上げていると、彼女はびしっと僕を指差した。 「もうリーマス予約済みだからね!」 「・・・・・・・・・・はい?」 「リーマスの好きな子、私が予約一番乗りだから!」 「・・・・・・・・・うん?」 彼女はにっと笑った。僕を指差したまま。 「リーマス、私が絶対惚れさせてやるんだから」 覚悟しておきなさい、そう言って彼女は手を振って出て行った。 ずるり、ソファから滑り落ちそうになった。 目の前がきらきらしている。 ぐっと彩度を上げたようだ。 「うわ、 ・・・・・・・僕ってやつは・・・」 そう自傷気味に呟いて、思わず笑った。 他の女の子とは比べ物にならない、とびきりの笑顔が焼きついた。(世界はいとも簡単に)++++++++++++++++++++++++ 「僕ってやつは(簡単な男だなあ)」と苦笑するリーマスが書きたかっただけ。