動機なんて簡単だ。 俺は正直な人間なんだ。 「見てコレ。責任を取ってください」 見事にずたずたに破られた教科書を俺につきつけ、そいつは言った。 俺はその教科書とそいつを交互に見て、最終的にそいつを見る。 「何で俺が」 「あんたが愛想振りまいて虜にしてるファンの皆様にやられたんだよ」 「だから何で俺が」 「自分のファンのやったことくらい責任とれ」 んな無茶な、と俺が呟くと問答無用だと返された。 もう一度ひどい有様な教科書を見る。 いやはや、女の執念とは恐ろしい。 なんて他人事のように、いや他人事なのだが、考えていたらそのボロボロの教科書で頭を叩かれた。 「っ、何するんだよ」 「他人事のようにしげしげと教科書を見つめるんじゃないわよ」 「・・・だって他人事だし」 もう一回叩かれた。だからなんで俺が怒られるんだ。 結構お怒り気味のそいつは続ける。 「まったくねえ、自分のファンくらい管理しなさいよちゃんと!迷惑!」 「ファンっつったって。俺認めたことないぞ」 「ファンでしょうが!何時でも何処でもシリウス君シリウス君シリウス君なんだよシリウス教信者か気持ちが悪いなもう!」 「・・・なんか俺が貶されてる気分になるんだけど」 「知らん。とりあえず弁償してください今すぐ新しいのを買って来い」 「何で命令形なんだよ」 「被害者に偉そうに言うな加害者」 「ちげーよ」 むしろそんな偉そうな被害者とかありえないだろ、というともう一度教科書で叩かれた。 「つーかなんでお前がそんな目にあうの」 「知らないわよ私が聞きたいわよ。でもまあ、仲良いからじゃないの」 「仲良い?俺が?お前と?」 「腹立つ言い方ね。幼馴染だからね、一般女子よりは会話回数も多いでしょうよ」 「・・・一般女子、ねえ」 「それがむかつくんでしょうよ、私たちのシリウス君に馴れ馴れしくしないで!みたいな」 「どんまいだなお前」 「あんたのせいでしょ」 「俺にどうしろと」 「早く特定の彼女作って私は無関係だと証明して」 「お前が彼氏作れよ」 「私よりシリウスのほうがモテるんだから早く作れるでしょ」 「いやお前、結構モテてるぞ」 「お世辞とか何いきなり気持ち悪い」 「お世辞じゃねーし失礼だなお前」 「え、じゃあ嘘?」 「だから嘘じゃないって結構モテてるよ」 「・・・・・・うそぉ」 「本当だって。だから彼氏つくろうと思ったらすぐできるぞ」 「や、でもほら私は好きじゃないと付き合ったりできない」 「じゃあ好きなやつ作れよ」 「え、なんていうかだって好きとかそんなまだ早くない?」 「お前は幼稚園児か」 「ほっとけ!私は純粋なんだ!」 「純粋とはまた違うと思うぞ」 「いいの!とにかく!シリウスが好きな子作って付き合えばいいの!」 「好きなやつとか普通にいるんですけど」 そういうと、そいつは目を丸くした。 少しまじまじと俺を見て、へえ、と言った。 「意外。いたんだ」 「いるよ、失礼だな」 「遊びじゃなくて?」 「ちゃんと好きだよ。 ずっと」 「ええ!片思い暦長いの?」 「結構。片思いしながら他の女と遊んだけど」 「最低。へえー、そうなんだ。やきもち妬いて欲しくて、みたいな?」 「・・・・・・・まあそんなもんだな。まったく効果なかったけど」 「へえ、どんまいだね君」 「お前が言うなお前が」 「まああれだよ、気持ちを伝えるには正直になればいいと思うよ」 「俺はもともと正直だ」 「その口一回爆発したらいいのにね。ともかく直接正直に言えば?」 「正直に・・・。俺正直になったら口より先に体が動くんだよね」 「知らないよそんなこと。まあ正直になればいいと思うよ」 「恋愛を知らないお前に言われたくない」 「うるさいな」 俺は正直にねぇ、ともう一度呟いた。 そうそう、と目の前のやつは頷いた。 正直になろう。しかし俺はさっき言ったように脳より体が正直なんだよな。 とか思いつつ、正直に動く体を止めようとも思わなかったが。 「・・・・・・・・ え」 「正直になってみた」 「・・・・・・・・ え」 「んだよ。正直になれって言ったのはお前だろ」 口をぱくぱくさせながら、ほんのりじんわり頬を染めながらそいつは俺に言った。 「な、な、なんでっ、 ・・・したの」 俺は正直に答えた。キスしたかったから++++++++++++++++++++++++ シリウス。拍手だし、と思って会話多め。 楽しかったです会話。