女の子は泣いていました。

女の子は大切なものを、なくしてしまったからでした。

女の子はもう泣きたくなかったのに、涙が溢れて止まりませんでした。

ずっと広い庭の隅で泣いていると、上から声がしました。



「何泣いてんだよ」



それは女の子が仲良くしていた男の子でした。

女の子は親しくしている男の子を見て、ますます顔をくしゃくしゃにして泣き始めました。

男の子はびっくりした様子で、女の子と同じようにしゃがんで、さっきより優しい声色でといました。



「なあ。何かあったのか、



と呼ばれた女の子は一度顔をあげ男の子を見ましたが、すぐに涙が込み上げてきてまた俯いてしまいました。

男の子は困って、何か言いかけては口を閉じて、を繰り返していました。

暫くして、はしゃくりをあげながら言いました。



「しり、う す、ごめんね…」



シリウスと呼ばれた男の子は意外な言葉に目を丸くします。

はそう言ってますます泣いてしまいました。



「なんでだよ。何だよ」

「ごめ、ん …」

「だから、何だよ。言ってくれなきゃわかんないだろ」

「 なくし、ちゃっ た…」



何を、と問うシリウスには暫く黙ってから小さな声で話始めました。

シリウスとは小さな時からの友達でした。

まだこの学校に入学する前、の誕生日にシリウスはネックレスをあげました。

いま思えば、ただのプラスチックのおもちゃに過ぎませんが、当時のにとってはキラキラ輝く 宝物でした。

それを、なくしてしまったと は言うのです。

ごめんね、と最後に付け足してはまた俯いてしまいました。

シリウスは少し驚いたようにを見て、少し笑いました。



「お前…まだあんなおもちゃ持ってたのか」

「だっ、て シリウスがせっかく くれ たのに、…」

「だからって…あんなガキんときの」

「でも、私にとってあれはそのへんの宝石より宝物だったもん…」



そう言ってまた目に涙を浮かべるに、シリウスは少し黙りました。

俯いたまま小さくすすり泣くの髪を、ふわりとシリウスが撫でました。

が少し驚いて顔をあげると、シリウスがじっとを見つめていました。

暫く何も言わずを見つめたあと、シリウスは笑いました。



「ったく、お前は本当に馬鹿だな」

「なっ…、…そうだけど…」

「今日、自分の誕生日って覚えてるか?」



そう言われて、はきょとんとシリウスを見つめました。

朝からなくしたネックレスを探していたので、そんなことは覚えていませんでした。

そんなを見て、シリウスは笑いました。



「ほんと、馬鹿なやつ」

「だ、だって」

「昔から本当、目を離したらすぐ泣いてて」

「そ んなことない、よ。…今は」

「泣いてるだろ」

「…これは、だから…… だって、」



また少し目を潤ましたを見て、シリウスは目を細めました。

もう一度ふわり、の髪を撫でてシリウスは言いました。



「泣くなよ」

「っ、…」

、こっちみろ」

「しり、うす 」



ふわり。時が止まったのをは感じました。

瞬きをしてシリウスを見ると、シリウスはを見て、微笑みました。



「え、…シリウス?」

「ん?」

「い ま、…え?」

「それより。左手。気づけよ」



が自分の左手を見ると、薬指には指輪がはめられていました。

が何も言えないまま指輪を見つめていると、シリウスが言いました。



「お誕生日おめでとう、



が視線を指輪からシリウスに戻すと、また、ふわりと 時が止まりました。

そうしてシリウスは優しくを撫でました。



「今回はネックレスじゃないけどな。あ、でも、プラスチックじゃないぜ?」

「シリウス…」

「またなくしたら、またやるよ。いくらでも。…いつまでも」

「しりう 、す…」

「だから、泣くな。 な?」

「っ、うん、…」



なら良い、とシリウスは笑いました。

はまた溢れそうになった涙を拭いて、シリウスに抱きつきました。

シリウスは最初驚いたようでしたが、すぐに笑って 抱き返しました。



「シリウス…」

「うん?」



ありがとう、と小さな声が聞こえてシリウスは口元を緩ませました。

少し体を離して、シリウスはにまたキスをしました。



「卒業したら、本物のキラキラの宝石やるよ」

「今ので、充分だよ」

「俺がやりたいからいいんだよ」



シリウスはそう言って笑って、を抱き締めました。

あいしてる、と聞こえたは笑いました。返事の代わりに、シリウスをぎゅっと抱き締め返しました。



「昔も今も、ずっと、シリウスから貰ったものはキラキラしてるよ」



そう言って笑うに、シリウスは優しいキスの雨をに降らせました。















(あなたがいれば、世界はこんなにも)















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愛さまリクエスト シリウス 甘 童話風。
童話風、というか物語風に。童話・物語風はやっぱり楽しいです。
短編では久しぶりな甘い甘い話を目指してみました。
今回のテーマは「甘く!シリウスをかっこよく!」でした。かっこいいのかは不明。

遅くなってすみません。

もしお気に召されなかった場合はびしばし言ってくださいませ。



リクエストありがとうございました!



白亜