成りそこないの印という名のかすんだ傷跡がゆらり揺れて、君は笑う。


「ナギニ、 」





するすると、床を這う大蛇に声をかける。

蛇はこちらを振り向いて、少し近づいた。





「あいつの様子はどうだ」





そういうと、いいえ別に、との答えが返ってきた。

そうか と言うと蛇は いい加減殺してしまえばいいではないですか、と言った。



「お前が餌ほしいだけだろ」



そうちょっと笑いながら言うと、それもありますけど。 そう素直に言ってから、するするとまた部屋を這って出て行った。





別に、か。





そうつぶやいて、杖をポケットに入れたままドアを開け階段を降り、ドアを抜けてさらに深い部屋へ。

最後のドアを開けると、一人の女が機嫌が悪そうに簡単なベッドに座っていた。

そしてこっちをみて、嫌そうに目を背けた。



「眠りは良好か?」

「ええ、 とーっても素敵な寝室をありがとう」



目を背けたまま、吐き捨てるように言う。



「これで自由にしてくれたら、最高なのにね」

「少しくらい不足がある方が、ありがたみを感じるだろ?」



ええその通りだわ、と棒読みで言ってはため息をついた。

細い腕が、服の袖から見える。

左腕の内側に、かすんだ傷跡が見える。



「傷は痛むか?」

「いいえ? 完全にされたわけでもないし、我が君だなんて思ったこともないから安心して」



ぶらぶらと左腕を振って、はにっこり笑う。

こちらも微笑んで返し、その傷にし損ねた腕を握る。



「抵抗されたのは初めてだ」

「あらそう。 素敵な体験になったじゃない」



そういって手を振りほどき、気だるそうに軽くベッドに寝転ぶ。



「俺様の前でそんなになるのは、お前だけだ」

「とても貴重じゃない。 よかったわね新しいタイプの人間を見ることができて」

「ああまったくだな」



そのままきしむ音を立てて、に覆いかぶさるも は表情ひとつ変えず言った。



「別に良いけど。 逃がすって条件よ」



「ムードも何もないやつだなお前は」

「あいにく恋してませんから」



口元を上げて、体制を整え 再び座ったを見る。





「俺様の元でいれば、一番の右腕にしてやるというのに」



ため息混じりにそういうと、は微笑んだ。





「あなたに仕えるくらいなら、死んだほうがましよ」







ほかの者なら口が裂けても言わないであろう言葉を、あっさりと言った。

ヴォルデモートは乾いた笑いを漏らす。



「最初のときにもそう言ったな」

「ええ、この傷をつけられそうになったときに」

「まさか蹴って妨害されるとは思ってなかったな」

「むしろそれで殺されなかったことに驚きだわ」



まるで人事のようには小さく笑った。

案外闇の帝王も慈悲深いのかもね、そう言いながら。



そして、ヴォルデモートを見て 言った。





「どうして私を殺さないの?」





ヴォルデモートはちょっと首を傾げてから さあな、と言った。



「物珍しさかもな」

「まあ、なんて人権無視な発言かしら」

「人権なんかあったのか」

「ええ、まあね」







そうだな、とヴォルデモートは小さく言った。



普通なら、蹴飛ばされた時点で殺していてもおかしくない。

それに今こんな風になめた口をきくなど 普通なら。



物珍しさだったのかもしれない。



誰もが恐れる自分を前に、言葉を吐き捨てた彼女が。

死を前に泣かなかった彼女が。



暫く様子を見ても良いかもしれないと、思った。





しかし今、これは面白いことに 自分は、













「なあ、

「なあに」

「お前は、俺様の下で仕えるのは嫌なんだな」

「あなたの下なんて御免よ」



そうか、じゃあ、





そう言いながら、彼女の口を塞ぐ。

目を丸くした彼女を見ながら、頬が緩んだ気がした。









「じゃあ俺様のものになれば良い」





───考えてあげても良い、そう言ったのが耳に入った。




































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だから何でうちの黒帝王さんはむだにサディストになるのですか。(知らねぇよ


だってあれじゃないですかこれ ヒロインさんなんか監禁・・・ごほんごほん。

いや、うん ど、    独占欲ゆえですよ!(フォローになってない


シリアスの中の暗くて痛い真ん中に甘さがあれば良い。

ゆらり目の奥が揺れる。