君の目は二色。





         綺麗なものしか写していない蒼色と

         残酷なものしか写していない緋色と





         君の目に映る私は、どっちで見えているのだろう。



































         「───な、  ん で」







         最初に出た言葉は、それだった。













         目の前で何が起こったのか。



         よく分からない。



         悲鳴ものどの奥で溜まって消えた。

         涙も涙腺で揺れて消えた。





         「おや、まだ 居たみたいですね」





         この部屋で、いや多分、この屋敷で私を除いてただ一人たっているその人物は ゆっくり振り向いた。





         身長は高いが、そんなに年上ではないだろう。

         というか同じ世代だろう。







         ただその場に立っていることしかできていない私に、彼はすこし笑った。



         「これはまた、小さなマフィアですね」



         そう言いながら、手に持つ長い先端がみっつ 鋭利に尖った棒をくるり、と回した。



         「あ、 ・・・・なたが やったの ?」



         渇いた口から、単語が漏れる。

         それを聞き取って少年は笑った。



         何も写しているようで何も写していないような両目で、冷たく私を見ながら。



         「正確には僕だけじゃないですが、ね。 あと二人。今はここに居ませんが・・・ まあ主犯は僕ですけど」



         そう言いながら、血塗れた階段を降りて来る。

         割れた花瓶や散った花、横たわり動かない黒い塊をうまく避けながら ゆっくりと。







         「えらく血生臭いマフィアに似合わない姿をしている。 本当にここのファミリーですか?」

         「・・・わ、たし はここのっ───」

         「そういえばここのファミリーにはボスの孫が居るとか聞きましたね・・・ 貴女がそうですか」





         ひとりでに、首が縦に振れた。



         脳裏を、叔父の姿がよぎる。

         そして彼の手に、叔父の拳銃が握られていることに気づく。





         「それは、おじいちゃんの・・・、っ」





         目線で気づいたのか、彼は引き金の部分で拳銃をくるりと回した。



         「何でも、代々伝わるモノだそうですね 古いものを大事にするのはいいですが、あんまり頼ると最新には勝てない」

         「おじいちゃんを、殺したの・・・ ?」





         そう聞くと、彼はにっこり微笑んだだけだった。



         いつの間にか、後数歩で手が届くほど近くに来ていた。





         二つの違う目が、私を捕らえている。

         漢字で六と浮かび上がっている赤色の目が、隣の青色と一緒に見ていた。







         一歩、彼は近づく。





         「僕と同い年くらいかもしれませんね、おいくつですか」

         「 じゅ、う ご・・・」

         「じゃあ 僕と同じですね」





         相変わらず微笑んだまま、また近づく。





         「どうしてこんな ことした、の」

         「どうして? 目的のためです」

         「それで 私の、おじいちゃんも 皆も・・・」





         さっき聞いた時みたいに、彼は微笑んだ。





         もう手が届く距離だった。

         ひとりでに体が動いた。











         瞬間だった。

         私の手は彼の手によって押さえつけられ、体は壁に押さえつけられていた。

         後ろ側から、至近距離から彼の低い笑い声が耳に入った。





         「されどマフィアの孫、ですね 速かったですね」





         外れた弾に当たって割れた瓶の破片がテーブルから落ちた音が聞こえた。

         足元に、おとした銃の存在を感じる。

         足で銃は撃てない、そもそも 体を動かせない。





         「叔父の形見の銃を奪い取ったかと思えば発砲ですから・・・ さすがに少し驚きましたよ」





         驚いたといいながら楽しそうな声が耳元に響く。





         「あなた、は 何者なの・・・」

         「僕ですか? 僕の名前は六道 骸です」

         「むくろ・・・ 」

         「そうです、君の名は?」

         「 どうせ殺すなら、いらないでしょ」

         「いいえ? さあ、どうぞ」



         「・・・



         「、ですか。 、選択肢を出しますから答えてください」





         ぐ、と背中を押さえている骸の手に力が入る。





         「僕について生き延びるか、このままおじいちゃんの形見で散る どっちがいいですか?」



         「え・・・」



         ドラマや映画で使われるような選択肢を出され、思わず声が出る。





         「本当はこんな風に出逢いたくはなかったのですが ・・・」



         「は・・・?」

         「いえ、気になさらないでください こちらの話ですので。 それで、どちらにします?」







         カチャ、と骸が銃を構えた音がした。



         この男が、この男のせいで皆散ってしまった。

         血が流れ出すように一斉に皆の顔が浮かんだ。









         答えなんて決まっていた。























         「は? 日本・・・?」





         思わず進めていたフォークの手が止まる。

         その反応を見て、骸は楽しそうに頷いた。





         「ボンゴレの時期ボスがいるんです。 ボンゴレをつぶさないと目的には近づかない」

         「また大きいこと企むね・・・」

         「クフフ、もちろんにも来てもらいますよ?」

         「え・・・ 日本語基本しかしゃべれない」

         「留学かねて行けば良いじゃないですか」





         そうでしょう、と微笑む骸に反論の言葉も出ない。

         ため息が漏れて、わかった と頷いた。





         「ていうか骸ってさ」

         「何ですか」

         「青色と赤色、どっちも見えてるの?」

         「・・・ 何が言いたいんですか?」

         「赤色のほうとかちゃんと視力あるのかなって・・・」

         「ご心配ありがたいですが視力は良いですよ」





         そういって、骸は微笑んだ。



         「そういえば、は前にもそんな事を聞きましたね」

         「え、聞いたっけ?」

         「僕が選択肢を出して、生きると選んだ後 犬と千種が戻ってくるのを待っている間、聞いてきましたよ」

         「・・・ あ、聞いたかも」









         骸の目は、二色。





         綺麗なものしか写していないような蒼色と

         残酷なものしか写していないような緋色と





         骸の目に映る私は、どっちで見えているの、と。











         「そういえば、その答えもらってないよね」



         「そうでしたか?」

         「うん、どっち?」





         骸は少し考えるように目を伏せた。





         「そうですね・・・  は両方ですよ」







         「えー・・・それって普通じゃない」

         「の質問の両目から見たら、大体は緋色に写ります、 でもは両方ですよ」





         そう微笑みながら、骸は私を抱き寄せた。





───Burgundy

( 何故なら、同じくらい罪深いから )

























END







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Clorsに恐れ多くも投稿骸!





白亜