「あ、いらっしゃい銀さん」

「あれ、ババア達は?」

「町内の用事で今ちょっといないの」


俺の家の下にある飲み屋に降りると少し前からここでバイトを始めたやつだけが居た。

まだ酒飲みがあ集まるピーク時間じゃないからか、店はひっそりとしている。

机を拭いていた手を止めて、カウンターに座った俺の前に来た女は言った。


「何飲みます?お客さん」

「奢ってくれ」

「嫌ですよ」


俺がいつもの、というとはいはいと返事を返してビンを開ける。

目の前に置かれたコップから、酒のにおいがする。

酒は奢ってあげないけど、といってさらに盛った枝豆を出された。


「タダか?いいのか」

「お登勢さんには内緒ね」

「おお、ありがとな」


出された枝豆を食っていると、差し出したにもかかわらず自分もつまみ出した定員を俺は見る。

いいでしょべつに、とそいつは笑った。 まあタダで貰ってる分俺も文句は言わない。

こう黙って笑ってたら美人なのに、こいつの男の噂を聞かない。


「・・・喋るからか?」

「え?」

「いや、こっちの話。 お前、黙ってたら美人なんだけどな」

「うわ、すっごい失礼。 銀さんに言われたくないよ」

「男の噂くらいないのかよ」


馬鹿にしたように言うと、そいつは失礼、ともう一回言った。

そうして枝豆をひとつつまんで、豆を向きながら拗ねたように言った。


「私だってね、モテるんだからね」

「さあな」

「本当なんだからね。 前だって、ここのお客さんの社長さんに告白されたんだから」

「断ったのか?」

「うん」

「勿体無いことすんだな。 そいつと一緒になれば玉の輿しゃねーか」


そうしたらこんな所でバイトをする必要も無いだろうに。

そう言うとそいつはううん、と唸った。

何で断ったんだ、そう聞くとさっきより長くううん、と唸って目線を枝豆に落としたまま言った。


「銀さんが好きだから」


は?、とそいつを見るとそいつは顔を上げて笑った。

なんてね、そう言った。

それと同時にガラガラと音を立てて店の戸が開く。


「あ、いらっしゃいませー」


カウンターから入り口に移動してお客を迎えるあいつを横目に、コップに入れられた酒に移る自分を見てみた。

くそ、と呟いた。


不覚にもときめいた
++++++++++++++++++++++++ 銀時。 うちは銀時<銀八ですね。登場率。 からかったつもりがうっかりどうしたことか、ときめいちゃった銀さん。