「・・・外に出たいなあ」

「そりゃあ俺に相談されても無理でさァ」

「連れてってくれない?」

「俺に言われても」

「だよね、うん。 冗談だよ」


外では他の隊士が相変わらず家の周りを警戒しているのであろう。

しかしまあ、籠の中は平和なもんだ。 と、縁側で寝転がったまま思いつつ、起き上がる。

籠の中のお姫さんは黙ったままで、ぼんやり庭を見つめていた。


「毎日、ありがとう」


ふいに隣に座る彼女が言った。

振り向くと、彼女はじっと俺を見ていた。


「別に、仕事ですからねィ」

「それはそうだけど、つまらないでしょう?」


俺が正直に答えるか迷っていると、彼女はね、とくすくすと微笑んだ。

そうして彼女はぼんやりと庭を見つめた。


「こうやってどうせ家に閉じ込めるんだから、護衛なんていらないのにね」

「そんなわけにもいきやせんよ」

「そうかなあ」

「そうでさァ」


彼女はぼんやり庭に建てられた塀を見ながら、そっか、と言った。


「でも俺ぁアンタの護衛になれて良かったと思ってますぜ」

「どうして?」

「堂々と横になってたって怒られねぇからでさァ」


彼女は少し目をきょとんとさせてから、笑った。


「そうだね、普通に隣で寝てるもんね」

「敵が来たら起こしてくだせェ」

「どっちが護衛なのかわかんないよ」


そういいつつも、彼女は俺に笑った。

俺も笑った。

しばらくの沈黙の後、彼女は口を開いた。


「外には、恋人たちが一緒に歩いていたりするんでしょう?」

「悲しい一人身も歩いてますけどねィ」


彼女はくすくすと笑った。

そうして、塀から目線を上げ、ぼんやり空を見ながら彼女は言った。


「いいなあ、私も 恋っていうのしてみたい」

「恋ですかィ」

「うん、というか 好きな人と一緒に外、歩きに行ってみたいなあ」


そう言って彼女は俺を見た。


「沖田さんなら、恋人になってもらっても全然、いいのに」

「・・・告白ですかィ」

「違うよ、あれ、うん。あれ、違うよ?」


わかんない、とそう言って彼女は笑った。

そうして座ってる俺の肩に彼女は彼女の頭を預ける。

俺が何も言わないでいると、隣で規則正しい寝息が聞こえてきた。

目線を横に落とすと、目を閉じた彼女いた。


「・・・ほんとは、連れて行ってやりてぇですぜ」


そう呟いて、さらさらと風に揺れる彼女の髪を眺めた。

この警護は何時まで続けるのだろうか。

早く終わればいい、早く終わらなければいい。

できるだけ早く、できるだけずっと。

間逆のことを思いながら、さっき彼女が口にした言葉を頭の中で繰り返す。


「俺だって、アンタが恋人だったらいいよ」


籠の中のお姫さんへの同情が、違う感情に変わるまでに離れなければいけないのに。

そう分かっていながら、あたりを見渡して、誰も居ないのを確認して 彼女をもう少し近くに引き寄せた。

もう手遅れ、なのだろうか。この、想いは。

求めることが愚かでも (そして愛に変わるまで)
++++++++++++++++++++++++ 沖田。 白亜はまったく、囚われ系お姫さま好きですね。ごめんなさい、好きです。