この手の中に、抱きしめられるほど君は近くに居るのに。
「あ、骸ー どしたの、並盛にくるとか珍しいね?」
「犬がここの駄菓子屋のお菓子じゃないと嫌だと言うので。 付き添いです」
「ああ、犬ちゃんよく来てるもんねえ」
触れられるほど、近くに。
でも君は いつも。
「で? 犬ちゃんは?」
「選んでます」
「一緒に居なくていいの?」
「大丈夫ですよ。 それに、」
こ ん な に 、 ち か く に 。
「───・・・貴女に逢いたかったですし」
こ ん な に 、 お も っ て い る の に 。
「───・・・ありがと」
ほら君は、いつもそうやって。
「告白の返事は、いつもそれです」
「・・・本心だもん」
「好きでも、嫌いでもない ですか」
「・・・・・・・」
「貴女は、いつもそうです」
「・・・・・・・うん」
「僕が、いつも どれだけ、貴女を ・・・」
どれだけきみを。
「・・・もうこうやっていうのも疲れました、いいですよ別に。」
「・・・なんか、ごめん」
「もう、慣れっこですよ。 ずーっと前から、貴女はいつもそうでしたから。」
「・・・前?」
「そうですよ。 前から、ずっと。 貴女はいつも、です」
いつも、伝えるたびに
少し困ったような笑顔を見せて、君は言う。
あ り が と う 。
お礼なんて、いらないから。
ただ、君が欲しいから 言っているだけなのに。
ありがとう、なんて。
「綺麗過ぎるんです、こんな僕には」
「は?」
「・・・・・・いえ」
「? 変な骸」
この手の中に、抱きしめられるほど君は近くに居るのに。
何度伝えても。
何度、思っても。
君は笑って、そういうから。
何度廻っても、君は、
「いつになっても綺麗過ぎるから、何も出来ないんですよ」
綺麗な残酷
(もし本当に君に逆らって触れてしまったら、僕がどうなるか分からないから 怖い。)
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恋に臆病な骸が書きたかった・・・んだと、思う。