「お前、なあ」




目の前で横になっている人物を見て、ディーノは眉間にしわを寄せながら言った。


ソファの上には、部下であり妹みたいなものであり、───ディーノにとっては何より大切な 少女が眠っていた。


ディーノはもう一度小さくため息を吐いて、ずりおちた上着を彼女にかぶせる。

ソファを占領されているため、ソファにもたれかかるように床に腰を下ろす。



すうすうと、気持ちよさそうな寝息が聞こえる。



「こういうところで寝たら風邪引くって何回言ったら分かるんだか」


そう言いながら、眠っている少女を見る。

どうしてこういうところで眠る羽目になったのかは知っている。


「遅くなるから自分の部屋で休んどけって言ったのに」


そういいながら、顔にかかる前髪を起こさないように払う。

ディーノは自分で払っといて、ちょっとためらう。

そして情けねぇ、と自分で自分に呆れる。


いつからだったか。

もう分からないくらい、傍に居すぎて。


「お前の兄ちゃんは犯罪をそのうち起こすかもな」


自分で言って、頭を振る。

そうして、もう一度ため息を出す。


「・・・こういうところで寝るな、頼むから」


いい夢を見ているのか、少し微笑んだ表情になっている少女にディーノは情けなく頼んだ。


ただでさえ、男くさい奴ばかりのマフィアなのだから いやだからこそ、皆寄ってたかってこの少女を過保護してきた。

だから、そういう意味での穢れを知らなく育った彼女だが もうそろそろいい年頃なので。


「ここまで無防備だと、困るんだよなあ・・・」


言いながら、そう思ってるのは自分だけではないだろう とディーノは改めて思った。

さすがに、もう父親のようになっているロマーリオはないかもしれないが まだ若い部下たちはきっと同じことを思っているだろう。



お兄ちゃん、からディーノだったのが ボス、に呼び方が変わって。

少し、複雑だったころから もう、 俺は。






「・・・・・・・・ あ、れ」


うとうとと、少女が目を開ける。

飛び跳ねるように手を顔からどけ、あわてて目をそらす。


「あれ、寝ちゃってた?」

「気持ちよさそうにな、 こういうところで寝るなって言っただろ」

「ちょっとうとうとしてたら寝ちゃったんだよ」


へにゃ、とまだ少し眠そうに笑いながら体を起こし髪の毛を手でとく彼女を見て ディーノは心の中でもう一度ため息をついた。


「頼むぜ、本当に」

「え? 何が?」

「え、   ・・・いやっなんでもない」


思わず思ったことが口出ていたことに驚いて頭を振る。

変なの、と笑いながら彼女はディーノの頬を触る。

ディーノは声も出ないまま目を見開いた。


「・・・怪我してる」


もうかさぶたになった傷を、心配そうに彼女が言った。


「ただのかすり傷だ、もうかさぶたになってるだろ」

「大怪我してもかすり傷って言うくせに」


そう言いながら、頬から手を離す。


「無理しないでっていつも言ってるのに」

「・・・・・・ 」


ディーノは少し目をはずしながら、頭をかく。


どうも困る、こうも 無防備だと。



「・・・・・・・・・  あのさ、お前 俺のことどう思っ」

「あっ 忘れてた」


ふいに思い出したように彼女が手を叩いた。

そしてにっこりと微笑んだ。



「おかえりなさい、 ディーノ」




「・・・・ でぃ、 のって」

「あ 。 えっと、ボス」


自然に、頬が緩んだのが分かった。

彼女の髪に知らずに手が伸びていた。



「別に、ディーノで良い」

「そうなの?」

「ああ」

「そっか」



頭をなでられながら、彼女は嬉しそうに微笑んだ。


「そういえばさっき、なんて言いかけたの?」

「え、いや あれは気にするな」

「えー」

「いつかそのうち教えてやるよ」

「絶対?」

「多分、絶対」

「それ絶対って言わないんだよ」

「今言ったらロマーリオに怒られる」

「え、何で」

「だから今度言うって」




だから、もうしこのままで
(誰より大事な君に伝えよう)









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初ディーノさん。 
ディーノさんは格好いいけどヘタレだと良い。