一度ちゃぷんと浸かってしまえば 。 「帰りましたよ。 」 「──ああ、お帰りなさい 骸さま」 骸さまは上着をソファに放り投げるやいなや、ぎゅうと私を抱きしめる。 そしてふわり、と髪をなでながらいつもの決まりごとを言った。 「いい子にしていましたか」 そうして私はいつものように微笑んで、言った。 「もちろん、 家にいたわ」 「貴女に外の世界は汚すぎる。 貴女は、ずっと。ここに居ればいいんです」 そういって骸さまは私にキスをする。 いつまでもいつまでも、僕だけを知っていればいい そう言いながら。 「貴女は僕の金魚なんですよ」 「・・・きんぎょ?」 ええそうです、と骸さまは隣に私を座らせながら微笑んだ。 「金魚鉢の中だけが金魚の世界でしょう? だから、」 「私は、 骸さま、貴方だけを知っていればいい ?」 そういうと骸さまはとても満足そうに、しあわせそうに 微笑んで私を膝に抱えた。 そうして私を膝の上に乗せて抱きしめて、後ろから耳元で囁いた。 「───愛していますよ、 僕の かわいいかわいい金魚」 ねえ、骸さま。 知ってる? 金魚鉢(ここ)の中は思ったより広くて(せまくて)、 それが金魚(わたし)にとって海であって空であって(檻であって)、 飼い主(あなた)が、全てを与えて(奪い去って)くれるの。 だから、可愛がって(あいして)くれている間 金魚(わたし)は、 ぷかぷか水槽(檻)のなかを泳ぐだけで(居るだけで)良いんだけれど、 骸さま、 あなたが (いなくなってしまえば、)。 「───私も、 あいしてます。 ・・骸さま」 ねえ骸さま、 (水は濁って外に負けないくらい汚れて水は蒸発して金魚は浮いて死んでしまうのよ) (だから、) あなたが 私の全てなの。 金魚鉢 (一度ちゃぷんと浸かってしまえば、 案外楽な檻なのよね) (いつ水が濁りだすのかが怖いけれど)
++++++++++++++++++++++++ (ご主人様?)骸。 これ、もう少しこう、爽やかにする予定だったです。一応。