彼女は僕のものだと思い込んでいた。

理由は簡単で、彼女はいつも僕を骸さん骸さんと慕ってきていた。

委員会の仕事で会って以来、僕がたまたま親切にしたのをそのまま信じたのか、僕を慕うようになった。

それに僕があらか様に貴女は特別ですよ、なんて言うと頬を染めて俯くのだ。

僕は確信していた、彼女は僕のものだと。

別に声に出して好きだとか言った覚えも言われた覚えも無いけど、もう恋人のようなものだったから僕は確信していたのだ。

分かりやすいくらい僕のことを好きな彼女を見るのが、楽しかったのだ。

そんなある日だった。ふと、教室から外を見ると校門のところに彼女が居た。

遅刻なんて珍しいなと眺めていると彼女は誰かに頭を下げていた。

校門の向こうにバイクが見える。兄弟か誰かに送ってもらったのだろうか。

にしては、感謝の表し方が大げさだ。

そんな風に思っていると、彼女が下げている頭を上げた。

微笑んでいる彼女のすぐ前に、ひとり、明らかに、家族ではない人間が居た。

その人間に向かって彼女はまた軽く頭を下げて微笑んだ。

何かを話しているようだが勿論、聞こえない。

相手の人間が何か喋って、彼女は 頬を、少し 染めた。

僕に向けるときの顔じゃないか、そう思った。

その少し照れた顔のまま彼女は少し俯いた。

そう、照れたら彼女は俯く。

思わず、座っていた椅子から立ち上がる。

冷静なもう1人の自分が言った。 何を動揺しているのだと。

その瞬間、彼女の体が見える面積が狭まった。

相手の体で、腕で。彼女の見える面積が、小さくなった。

何かが頭の中でがくん、と壊れた音がした。

そして気づいたのだ、彼女を。彼女を慕っていたのは、僕の方で。

自分でも気がつかないほど、彼女を好いていたのだ。

そんなことよりも、今は。

腕からすり抜けて顔を真っ赤にしている彼女から目が離すことができないまま、無駄に大きくチャイムの音が聞こえた。


「・・・・・・貴女は、 僕の、ものじゃないんですか」


僕が今まで見た中で一番真っ赤になって早足で校舎に向かって歩いてくる彼女を見ながら、思わず僕は呟いた。



そんなきみは知らない
++++++++++++++++++++++++ 骸。ヒロインと絡んでませんわざとですよ、ええ。わざとですよ。 っていうか文ばっかで読みにくくてすいません。 殆ど思考文っていうのしてみたくて。 実は雲雀夢と繋がってたり。