「寒い」
「ああ」
「・・・・寒い」
「・・ああ」
私がちらりと先生を見ると、先生もこちらを見ていた。にやり、と先生の口元が笑う。
ああ先生は、やっぱりずるい。
私が望むことを知っていて、わざと何もしてくれないのだ。
「・・・・寒いよ」
「ああ、寒いな」
「・・・・・・・・・」
「なんだ?」
意地悪く笑う先生の顔が私の顔を覗き込んで来る。
私が何も言わないでじっと見つめ返すと、先生はふっと笑って私の手を握った。
嬉しくてぎゅっと握り返すと先生の小さな笑い声が聞こえた。
「本当に素直じゃないやつ」
「・・・銀八先生のあほ」
「俺は先生だからあほじゃありませーん」
「ばか」
「ばかじゃないでーす」
そんなやり取りをしていると、びゅう、と風が顔にぶつかる。
寒いのとびっくりしたので思わず目を閉じると、腕が引っ張られそのまま抱きしめられた。
「え、っえ?」
「道路で目ぇつぶんなよ、危ないだろ」
「あ、はい・・・ありがとうございます」
よしよし、と言いながらも先生は腕を解いてくれない。
「でもなんでわざわざ道路脇に?」
「あー、それ聞くか普通」
「え?」
「人がいるとこでこういうことして怒るのはお前だろ?」
そういって先生はさっきよりもぎゅう、と力をこめて私を抱きしめた。
ああ、そうか、と納得と同時に恥ずかしいのと嬉しいので胸がいっぱいになる。
「最近忙しくてデート出来なかったしな」
「そうですね」
「一応禁断の愛だからおおっぴらにいちゃつけないしな」
「春までは、ですね」
「ああ、まあな」
またぎゅう、と力をこめられて幸福感に目を閉じる。
久しぶりに感じる暖かさが心地よくされるがままに目を閉じていると、ゆっくりと腕を解かれて何だか寂しくなって先生を見上げる。
と、私を見下ろす先生と目が合って、先生はふっとまた笑った。
「なんだ、まだ足りないか」
「・・・・う、・・・うん」
「しょーがねーなー」
そういいながらも先生は笑ってもう一度ぎゅう、と私を抱きしめる。
嬉しくなって私も先生に腕を回す。
「なあ、?」
「はい、先生」
「前も言ったけどさ、二人でいるときは先生って言うな」
「え、あ・・・・ うん」
「ほら、名前呼べよ」
少し体が離れて、ふわりと微笑んだ顔が目の前に現れる。
ああ、もう 、
「だいすき、 ・・・銀八」
唇があつくなって、目を閉じて、唇が離れて、目が合って。
銀八はにっと笑った。
「よし、よくできました」
目を閉じて、銀八の大きくてあったかい手が私の頬に触れて、銀八の私を呼ぶ声が聞こえて、
ああ、 しあわせだ、と思った。
春の味のキスに溺れる
(このまま時間がとまればいいのに) (ああ、甘くて幸せでこのまま溶けてしまいたい)
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いちゃいちゃキャッキャウフフさせたかっただけなんです
ひっさしぶりにこんな甘いの書いた気がする!
長さがJunkにしてはちょっと長いような短編にしては短いような・・・でも久しぶりに甘いの書けて満足なので短編に。
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